インドのモバイルゲーム革命:急成長する巨大市場の全貌と未来
- Jet Research Team
- 2024年6月7日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年6月22日
1. はじめに:インドゲーム業界の黎明期から現在まで
インドのゲーム業界は、その歴史が比較的浅いにもかかわらず、急速な成長を遂げています。1990年代後半にPCゲームが登場し始めましたが、本格的な発展は2000年代のインターネットの普及と共に始まりました。

しかし、真の転換点は2010年代のスマートフォン普及です。特に、2016年のJioによる格安4Gデータプランの導入が、モバイルゲーム市場を爆発的に拡大させました(IAMAI & Kantar IMRB、2019)。今や、インドは世界第2位のスマートフォンユーザー数を誇り、その大半がゲームをプレイしています。
2. 数字で見るインドのモバイルゲーム市場
2023年現在、インドのゲーム市場は驚くべき成長を遂げています。
ゲーミング市場規模:2023年に約26億ドル、2029年には72億ドルに到達予測(Mordor Intelligence、2023)
モバイルゲーマー数:約5億2,000万人(2023年)、2025年には6億2,000万人超と予想(KPMG-Google、2023)
アプリダウンロード数:2022年、全世界のゲームアプリダウンロードの約19%をインドが占める(App Annie、2022)
特筆すべきは、この成長のほとんどがモバイルゲームによるものだという点です。インドのゲーム収益の約90%がモバイルゲームから生まれています(Niko Partners、2023)。
3. なぜインドはモバイルゲーム大国になったのか
3.1 手頃なスマートフォンの普及
インド製や中国製の低価格Androidスマートフォンがインド市場を席巻。2023年、平均的なスマートフォン価格は約130ドルまで下落しました(IDC、2023)。
3.2 安価なデータプラン
前述のJioの影響は絶大。1GBあたり0.1ドル以下のプランが一般的になり、世界的に見てもデータ料金が最も安い国になりました。(TRAI、2023)。
3.3 若年層の増加
インドの半数以上が25歳未満。この若年層がゲームの主要ユーザーというのも注目されます(UN Population Fund、2023)。
3.4 ローカライゼーションの進展
ヒンディー語やタミル語など、地域言語へのゲームローカライズが進みました。約43%のユーザーが母国語でのゲームを好むというデータもあります(Google-KPMG、2023)。
4. インドのゲーム業界を支える組織
業界の成長と共に、それを支える組織も発展しています。
Indian Digital Gaming Society(IDGS):2020年設立。ゲーム開発者、パブリッシャー、投資家のネットワーク構築を目指す。弊社創業者のRajan Navaniが創設に尽力し、初代Presidentになりました。
Mobile Premier League(MPL):eスポーツとモバイルゲームのプラットフォーム。2023年時点で9,000万ユーザーを抱えます。
Lumikai:インド初のゲーム・インタラクティブメディア特化型VCファンド。2023年までに20件以上の投資実績があります。
これらの組織は、資金調達、人材育成、国際展開など、多岐にわたり業界をサポートしています。
5. インドのモバイルゲーム開発の特徴
5.1 ローエンドAndroidへの対応
インドのスマートフォンの約95%がAndroid(Statcounter、2023)。しかも多くが低スペック。開発者は軽量で最適化されたゲームを作る必要があります。
5.2 フリーミアムモデルの優位性
無料でダウンロードし、ゲーム内課金で収益を上げるモデルが主流。インドユーザーの支払い意欲が比較的低いためとされます。(App Annie、2022)。
5.3 ローカルコンテンツの人気
クリケットシュミレーションゲームの代表作「Real Cricket™」シリーズは、インド人開発者Nautilus Mobileによる作品。2023年までに1億ダウンロードを達成。クリケットの細かい再現度が評価されています。

6. インドのゲーム市場における課題
6.1 収益化の難しさ
ユーザー数は多いが、有料ユーザーの割合は低め。2023年時点で、有料ユーザーはわずか1~2%という課題があります(IAMAI、2023)。但し、近年では、BGMI(旧PUBG)などのように、IAP課金で成功している、タイトルも増えてきています。
6.2 インフラの格差
都市部と農村部のインターネット環境の差が大きい。農村部のゲーマーも増加傾向(57%から66%に増加、2022-2023)ですが、接続の安定性が課題とされています(KPMG、2023)。
6.3 人材不足
インドのゲーム業界はまだまだ歴史が浅く、ゲーム専門の教育機関が少なく、熟練開発者が不足しています。特にゲームデザイン、3Dモデリングの人材が求められています(NASSCOM Game Developer Conference、2022)。
7. 政府の取り組みと法的環境
インド政府も、ゲーム産業の潜在力を認識しつつあります。
Start-up India:ゲームスタートアップにも資金援助や税優遇。
Skill India:ゲーム開発スキルを重点分野に指定(2022年)。
一方で、一部州ではリアルマネーゲーミング(RMG)への規制が厳しく、業界に影響を与えています(Tamil Nadu州のRMG禁止、2023年)。
8. インドゲーム市場の未来予測
8.1 5Gの普及
2023年末までに5Gユーザーが1億人を超える見込み(Ericsson、2023)。クラウドゲーミングやAR/VRゲームの普及が期待されます。
8.2 eスポーツの成長
2023年のeスポーツ収益は約1億ドル。2027年には3億ドルを超えると予測(Niko Partners、2023)。
8.3 インドゲームのグローバル展開
「Ludo King」や「Real Cricket™」の成功により、インド発のゲームが世界市場を狙う流れに。2025年までにインドのゲーム輸出額は10億ドルに達する可能性(IAMAI、2023)。
9. まとめ:チャンスの国、インド
インドのモバイルゲーム市場は、その巨大な人口、急速なデジタル化、そして固有の文化的背景により、世界でも類を見ない成長を遂げています。課題は残るものの、政府の支援、業界団体の活動、そして何より情熱的な開発者とユーザーの存在が、この市場を推進しています。
グローバルゲーム企業にとって、インドは単なる消費市場ではなく、イノベーションと人材の宝庫です。インドのゲーム革命は始まったばかり。この大いなる物語の一部となる準備はできていますか?
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