インドのフィンテック業界が熱い!急成長するデジタル決済市場の動向と展望
- Jet Research Team
- 2024年6月13日
- 読了時間: 5分
デジタル決済の普及が後押し
インドでは近年、フィンテック(FinTech=金融×テクノロジー)業界が急速に成長しています。その背景にあるのが、スマートフォンの普及とデジタル決済サービスの台頭です。

インドでは従来、現金決済が主流でした。しかし、政府がデジタル化を推進する中で、デジタル決済の利便性が広く認知されるようになりました。2016年の高額紙幣の富裕化措置もデジタル決済の普及に拍車をかけました。
その結果、インドのデジタル決済市場は過去5年間で約25%の年間平均成長率を記録。2022年には5兆ルピー(約8兆円)の市場規模に達しています。主要なデジタル決済サービスには以下のようなものがあります。
電子ウォレット: Paytm、PhonePe、Amazonpay、Google Pay
UPI(統一決済インターフェース): BHIM アプリ
ネットバンキング: NEFT、RTGS、IMPS
政府の強力な後押しと規制緩和
インド政府は、デジタル決済の普及を強力に後押ししています。キャッシュレス社会の実現による経済活性化と、地下経済の可視化を目指しているからです。
具体的な施策として、2018年にはデジタル決済の規制緩和策「デジタル・インディア」が打ち出されました。また、2022年からは全国を対象とした「デジタル決済インセンティブ制度」が開始されています。
このように政府からの強い支援を受けて、フィンテック企業の参入が相次ぎ、サービスの多様化が進んでいます。
フィンテック企業の熾烈な競争
インドのデジタル決済市場で勢力を伸ばしているのは、新興のフィンテック企業が中心です。国内トップ企業の1つPaytmは、電子ウォレット、UPI、保険、貸付、投資などサービスを展開。2022年にIPOを実施し、時価総額は1兆ルピーを超えています。
一方、GoogleのGPay、AmazonのAmazon Pay、フィリピン企業のPhonePeなどグローバル企業との競争も激しさを増しています。2022年、GoogleはPixel端末でUPIに対応。AmazonPayは全インドのオフラインストアでの利用を可能にするなど、シェア拡大に努めています。
国内外の企業が参入を控える中、セキュリティ対策の強化やユーザー獲得に向けた新サービス開発が課題となっています。
中小企業向けサービスが新たな成長領域
フィンテック業界では、個人向けのデジタル決済に続いて、中小企業向けのサービスが新たなフロンティアとして注目を集めています。
従来、中小企業は銀行の審査が厳しかったり、金利が高かったりと資金調達に苦労していました。しかし、フィンテック企業が機械学習などのAI技術を活用し、効率的な与信審査を実現。お手頃な金利での融資サービスが広がりつつあります。
また、クラウドファンディングやP2Pレンディングなど、新しい形態の資金調達サービスも登場しています。政府も2020年に「中小企業デジタル化支援政策」を開始するなど、後押しをしています。
デジタル決済を軸に、融資・送金・マネーロンダリング対策など中小企業向けの金融サービスが広がれば、インドの起業家活動が一層活発化すると期待されます。
フィンテックのさらなる進化を促すAIやブロックチェーン
今後、AIやブロックチェーン技術の発展がフィンテック業界に大きな変革をもたらすとみられています。
AIでは、機械学習やディープラーニングの活用が進むでしょう。ユーザーの行動履歴などのビッグデータを解析し、的確な融資審査や、より個人に合わせたサービス提供が可能になります。
一方のブロックチェーンは、中央集権型からP2Pへと金融の在り方自体を変革する潜在力を秘めています。契約の自動執行やトークン経済の実現など、フィンテックと相性が良い技術と言えるでしょう。
企業はこうした新技術を活用して、ユーザーの利便性と安全性を高めるサービス開発に取り組んでいくことが求められます。
多様なフィンテックサービスは生活に浸透
デジタル決済に留まらず、多様なフィンテックサービスがインド国民の生活に浸透しつつあります。
具体的には、以下のようなサービスが広がりをみせています。
金融機関を介さずに送金できるP2Pアプリ
AIを活用した個人向け資産運用アドバイザー
ブロックチェーンを利用した不動産トークン
Eコマースに特化した決済・ローンサービス
農村部の無銀行層向けのモバイル決済
若年層を中心に、フィンテックサービスへの親和性が高いのが特徴です。個人の生活スタイルに合わせた柔軟で便利なサービスが増えれば、利用は一層広がるでしょう。
規制強化に対する取り組みが課題
フィンテック業界の急拡大を受けて、インド政府は業界への規制強化に乗り出しています。利用者保護と健全な発展の両立が課題となっています。
2022年、準備銀行(中央銀行)はフィンテック企業に対する規制の詳細化に着手しました。匿名性の高い決済の規制、AML(マネーロンダリング防止)強化などが検討されています。
企業側も、サイバーセキュリティ強化やKYC(顧客確認)の徹底化などに取り組まざるを得ません。利用者のプライバシーと利便性のバランスをどう確保するかが課題となっています。
技術の進歩に伴い、適切な規制のあり方は今後も見直されていく必要がありそうです。
まとめ: 新しいスタンダードを作るインド
インドのフィンテック業界は、政府の強力な後押しと新興企業の参入により、めざましい成長を遂げています。個人のデジタル決済だけでなく、中小企業向け融資やP2P送金、資産運用サービスなど、金融サービス全般にイノベーションが広がっています。
AIやブロックチェーン技術の発達により、フィンテックはさらに進化を遂げるでしょう。セキュリティと利便性の確保が課題ですが、ユーザーの生活に密着した革新的なサービスが次々と生み出される事が期待されます。
今後、規制の適正化が進めば、インドのフィンテック業界はグローバルなスタンダードを作る存在になるかもしれません。世界に先駆けてキャッシュレス社会を実現する国として、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
日本を含む海外企業にとっても、魅力的な市場であり続けるはずです。今後のインドのフィンテック業界から目が離せなくなることは確かです。
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