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急成長するインド音楽業界 - 3.7億人のインドの若者は何を聴いているのか?

  • ryoshima
  • 2024年6月13日
  • 読了時間: 8分

1. はじめに

2021年の国勢調査によると、インドの総人口は約13億8,000万人です。そのうち、国連の人口統計によれば、Gen Z(ジェネレーションZ/1997年~2012年生まれ)が約27%を占めていると推計されています。つまり、インドにはおよそ3億7,000万人のGen Z世代が存在することになります。


この世代は、デジタルネイティブでありながら、従来の文化や価値観にも親しんでいます。彼らが生み出す新しい音楽文化は、インドを代表する「ニューカルチャー」として着目されています。


急成長するGMJのボージュプリー語専用のYoutubeページ。インドは多言語・多文化なのです。(from GMJ youtube channel)


2. Gen Zが注目する音楽ジャンル

2.1 インディーポップ/ロック

インドの若者たちを中心に、アーティストが自由な発想で音楽を作れるインディーシーンが勢力を持ち始めています。


例えばプリヤ・セナは、西洋の音楽的影響を受けつつも、インド的なメロディとリリックを取り入れた独自のサウンドで人気を博しました。同じくアヴィ・ナヴもヒンディー語と英語を融合させ、現代的な恋愛感情を歌った作品が共感を呼びました。


一方、ザ・バンド・メシュキーはインド北部の民族音楽的要素を取り入れつつ、ロックサウンドに乗せています。地方の伝統音楽とモダンなサウンドが絶妙に融合した点が高く評価され、若者たちの間で人気となりました。


このようにインディーポップ/ロックシーンでは、従来のボリウッド音楽から離れ、よりオルタナティブでジャンルレスな音楽性が支持されているのが特徴です。

2.2 ヒップホップ


グルガオンを中心に台頭したインドのヒップホップシーンは、Gen Zを中心に広く人気を博しています。ディヴァインやナエズドッグ、リリックービーンバッググループなどのアーティストが代表格です。彼らの作品は社会問題や若者の現実を赤裸々に表しています。


2.3 フォーク/インディーフォーク


伝統的なフォークから洋楽のフォークロックまで、Gen Zがこのジャンルにも親しんでいます。プリティ・ブッタ、スミー・ヴィッツ、トリエスのようなアーティストたちが人気を集めています。インドの土着的な文化も取り入れつつ、現代的なアレンジを施しています。


2.4 インディーポップ(季語)


季節や地域に根付いた音楽文化として、独自の音楽ジャンルを生み出してきました。例えばプンジャブのサガ、ラーフ、などがGen Z向けのポップス化を遂げています。伝統と現代の融合によるハイブリッドなサウンドが魅力です。


3. Gen Zが音楽に求めるもの


3.1 アイデンティティーの表現


Gen Zにとって音楽は、自らのアイデンティティーを表現する大切な手段です。民族、言語、価値観などを通じ、自分たちの存在を主張しています。例えばヒンディーラップは、社会からの疎外感や不満を吐き出す場にもなっています。


3.2 社会的メッセージ


貧困、格差、環境問題など、Gen Zが直面する様々な社会課題への問題提起も、音楽を通して行われています。特にヒップホップで是非とも訴えられることが多いです。一方で平和や親密さを謳うメッセージもあり、二つの側面が共存しています。


3.3 エンターテインメントとしての体現


もちろん、音楽はGen Z向けのエンターテインメントコンテンツとしても大きな役割を果たしています。ストリーミングやSNSで気軽に音楽を楽しめることから、質の高い娯楽作品への渇望も生まれています。


4. Gen Zと音楽プラットフォームの関係


4.1 ストリーミングの普及と影響


スマートフォンの普及に伴い、音楽ストリーミングサービスが若者を中心に急速に浸透しています。JioSaavnなどの現地アプリとApple Music、Spotify、YouTubeミュージックの人気が高まっています。


ストリーミングは新人アーティストのブレイクを後押ししただけでなく、Gen Zの音楽への接し方そのものを変えました。ジャンルを越えて自由に楽曲を聴くスタイルが定着しつつあります。


4.2 SNSでの発信力


TwitterやInstagramなどのSNSは、Gen Zアーティストと聴衆をつなぐ重要な存在です。新曲の発表や最新情報の発信の場として大いに活用されています。


特にInstagramに関してはプロモーションの中心的な役割を果たしています。インフルエンサーマーケティングやライブ配信を通じ、アーティストと聴衆の双方向の関係性を生み出しているのです。


4.3 生配信の台頭


Gen Zを中心に、ライブストリーミングの人気も高まっています。コロナ禍で対面ライブが制限される中、この動きに拍車がかかりました。


Insider、JioSaavnApp、Instagramライブなど、様々なプラットフォームで音楽ライブの配信が行われています。アーティストにとっては現実空間を超えてファンとつながれる貴重な機会でもあります。


5. Gen Zとつくるインドの音楽シーン


5.1 イベントとライブハウス文化


昨今、Gen Z向けの音楽フェスやライブハウスの動きも活発化してきました。例えば、NH7 Weekenderなどの大型音楽フェスでは、インディーズアーティストの出演機会が広がっています。


また一方で、プネーやムンバイ、デリーなどの大都市を中心に、バーやライブハウスでのライブパフォーマンスも充実してきました。地元のアーティストにとってはデビューの場となっています。


5.2 レコード会社の対応と新興レーベル


メジャー系のユニバーサルやソニーといった大手レコード会社は、次々とインディーレーベルを買収・提携するなど、新しいシーンに対応しつつあります。


一方で、Gully Gangなどの新興インディーズレーベルも台頭し、Gen Z発の音楽シーンを下支えしています。資金力はないものの、インドの音楽文化をよく理解しており、良質なコンテンツを発掘する役割を果たしています。


5.3 ストリーミング収益とグッズで稼ぐ


音楽で収益を上げるために、インドの若者たち(Gen Z)のアーティストたちはストリーミングサービスとマーチャンダイジングの両面に注力しています。


ストリーミングでは、サブスクリプション収入に加え、広告収入、スポンサードプレイリストなどの収益化が可能です。一方、グッズ販売ではTシャツやキャップ、フィギュアなどのファンアイテムを投入。ライブ会場でも積極的に販売しています。


5.4 インディーズレーベルの存在感


メジャーレーベルに加え、様々なインディーズレーベルがGen Z発の音楽シーンを下支えしています。例えばCult.Fitレコーズ、Gully Gangなどが、新人アーティストの発掘や楽曲のプロモーションに尽力しています。


資金力はメジャーには及びませんが、インドの音楽文化を熟知しており、ニッチなサウンドでもマーケティング可能なのが強みです。メジャーとインディーズの共存が、多様性に富んだシーンを生み出しているといえるでしょう。


6. グローバル市場への飛躍 - Global Music Junctionの台頭とインド音楽業界


インドの音楽シーンの勢いを体現しているのが、Global Music Junction(GMJ)の急成長です。GMJは2019年に設立されたデジタル音楽プラットフォームですが、わずか数年でインドを代表する音楽配信会社へと成長を遂げました。


ジェットシンセシスの子会社であるGMJの成長は、世界にも注目されており、ワーナーミュージックは2024年にGMJへの出資と戦略的提携を発表しました。

6.1 GMJの急拡大する規模と実績


  • 100社以上のパートナーと提携

  • 2億5,000万人以上の有料会員

  • 年間1,000億分のエンターテインメント提供

  • 13万を超える音源/映像コンテンツを保有


6.2 多彩なアーティストとのコラボレーション


GMJは、往年の歌手から現役の人気アーティストまで、ジャンルを問わず幅広いミュージシャンとタッグを組んでいます。


  • ボリウッドの重鎮:ソヌー・ニガム、サリム&スレイマン・マーチャント、シャーン

  • 地域の人気歌手:ケサリ・ラル・ヤダヴ(ボージュプリー語)、レヌカ・サプナ・チョウドリー(ハリヤナヴィー語)、マレー・ミシュラ(オディア語)など


6.3 音楽教育・制作事業への多角化


GMJの事業は音楽配信だけにとどまらず、教育・制作分野にも広がっています。


  • オンライン音楽学習プラットフォームArtium Academyと提携

  • ハリプレム・フィルムズ(ラジャスタン)などの映画制作会社とタイアップ

  • 音楽プロデューサーとのコラボ:サヒル・サンドゥ(西部ビート)、マレー・ミシュラ(バサンタ・スタジオ)


6.4 驚異的な視聴再生数


GMJによる作品の視聴再生数も記録的な数字を残しています。


  • サプナ・チョウドリーのハリヤナヴィー語ミュージックビデオ「Jale 2」は90日で3億回のYouTube再生、1,500万回のInstagramリールズ再生を記録。

  • シヴァニ・シングのボージュプリー語曲「センバー・ガンカウワ」は6か月で7億回のYouTubeビューを達成。


このように、GMJはデジタル音楽配信プラットフォームとしてだけでなく、インドの次世代音楽文化を牽引する存在となりつつあります。


7. インド音楽のさらなる発展に向けて


6.1 ストリーミングの課題と可能性


ストリーミング配信は音楽の民主化を進める半面、一作品あたりの単価の低さが課題となっています。一方で、有料会員の増加によるARPUの向上が期待できます。


6.2 グローバル市場への本格展開


これまではインド音楽業界は国内市場が中心でしたが、最近では海外進出も活発化しつつあります。GMJに代表されるように、各地の音楽シーンとのつながりが生まれています。


6.3 インド発コンテンツのグローバル化


インドの伝統音楽やフォークなど、土着的なジャンルのグローバル広がりにも注目が集まっています。Gen Zを中心にローカルでありながらもグローバルな音楽性を追求する動きが加速しているのです。


インドの音楽シーンは、確実に新たなステージに向かっています。Gen Zを中心とした若者たちの挑戦が、未来を切り拓いていくことでしょう。


インド音楽についての調査や専門家へのヒアリングが必要な場合はこちらからお気軽に弊社にお問い合わせください。


 
 
 

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